「健康」とは、何を思い浮かべるでしょうか。
けがや病気がない、元気に体を動かせる…
最近かぜをひいたり、身近に病気になった方がいたりすると、感じ方がまた違うかもしれません。健康とは病気がないだけではなく、精神的社会的にも良好な状態であるといわれます。
現代の私たちは健康でしょうか。
上下水道の整備や医療の発展など、公衆衛生のおかげで、乳児死亡率は低下し、平均寿命は延びています。
体格も1950年ごろの平均と比較すると30代男性では身長は10㎝、体重は20㎏近くも大きくなっています。
そんな現代ですが、少し前は成人病といわれていた生活習慣病のほか、アレルギー、うつ病といった精神的疾病などが増加しています。医学が進歩し、食も豊かになり、便利な世の中になりましたが、新たな健康問題も増えている状態です。子どもたちや若者の中にも生活習慣病や摂食障害、心の病を抱えている人もいます。
それらの課題を解決するには、肉体だけではなく心も健康に生きるにはどうすればよいのでしょうか。
健康には「教育」が必要です。
世界には文字の読み書きができない人がいます。
文字が読めない、教育が受けられないことが、政治や経済、医療の発展の妨げや、貧困や差別、健康や安全と連鎖しています。
日本では義務教育が9年間になっており、高等学校や専門学校、大学に行く人もいます。また江戸時代には武士以外の人たちも寺子屋で学んでいたようです。「読み書きそろばん」と最近は聞かなくなりましたが、寺子屋での教育が広まったことにより、日本人の識字率が高くなったといわれています。
文字が読める、教育を受けられる。
物や食べ物もたくさんあります。情報もです。
では今必要な「教育」とはどのようなものでしょうか。
かつて多くの人が命を落とし、長く原因不明で恐れられた病気に壊血病や脚気があります。
ビタミンの欠乏症であったことが今ではわかっています。
科学が進歩し、ITが身近になり、情報はすぐに手に入ります。
そんな現代でも
知らないうちに糖尿病になったり、目や歯が悪くなってしまったり。
病気ではなくても睡眠や食事が乱れている、とりたくてもとれない。
無理なダイエットや痩身願望によって身体を壊してしまう。
人間とちがい野生動物にはほとんど肥満などはみられないといいます。
毎日どのように生活するか、何を食べるか、何を食べないのか。
私たちにはその選択が必要です。
選択肢が多くあり個性もさまざまな人間にとって、身体や食事への知識や思考判断力、健康教育の重要性が増しています。
私たちは生まれてから、見るもの、聞くもの、触れるもの…
未熟な状態で生まれ、環境からさまざまな刺激を受け学習をしていきます。
泣くときも、何かを口に入れるときも、寝ているときも
呼吸の学習
摂食嚥下の学習
さまざまな感覚刺激を受容し学習、発達していきます。
子育てにおいて、胎児期の過ごし方、出産、産後…
核家族化もあり、家庭や地域で受け継がれてきた知識や知恵がなくなり、
授乳哺乳のしかた、抱っこのしかた、寝かせ方がわからない…
泣く、寝ない、飲まない、食べない…
手をなめるのは良いのか?足をなめるのは?寝返りが遅い?ずりばいが遅い…
妊娠出産子育てがわからない、大変、つらい、悩んでいる方も多いようです。
ネットで検索をすると、SNSで質問をしても、たくさんの回答は表示されます。
悩んでいたことの解決につながり助かることもあります。
こうすれば良かったのかと本当に救われることもあります。
親切な心遣いや優しい言葉に心温まることもあります。
現代だからこそ使えるものはもちろん使いましょう。
同じように直接相談できる、身近に助けてくれる人、場所があることも大切です。
そして健康、命に関わるこれらの知識は、義務教育で必修にしてもよいくらいです。
ゆりかごから墓場までという言葉がありますが、ゆりかごよりさらに前、お腹にいるときからの栄養や姿勢、運動の大切さなどが広く知られるべきです。
これらの教育を担うのは「体育」だと考えています。
小中学校から保健体育の学習があり「体育」というと学校体育での運動やスポーツ、鉄棒、跳び箱などがイメージされやすいようです。
学校体育においても、体を動かし体力の向上を図るだけでなく、心身の健康・安全についての知識や生涯にわたって運動に親しむのに必要な能力を身につけることをねらいとしています。
生涯学習という言葉が生まれたのは50年ほど前のようですが、身体との付き合いは一生です。
そして体を動かすことは脳を動かすこと。体の発達は脳の発達です。
赤ちゃんの成長発達にも、体力運動能力向上にも、高齢者の認知機能においても、体を動かすことの重要性が明らかになっています。
現代の健康問題の根本はどこにあるのか。
高齢者の認知症、生活習慣病、うつ病、こどもたちの学力・体力・育ちの問題。
それらの課題に対し必要であるのが生涯にわたる「体育」「教育」だと思うのです。
出会った人・関わった人が、元気になる。能力を伸ばす。楽しく、健康に、幸せに生きる。これらが私の願いです。
立派なことを書いていますが
私には世界中の人に大きな影響を与えるような力はありません。
できる限り多くの人の役に立つ。それも目標です。
ただ世界からすれば小さなことかもしれませんが
目の前の一人ひとりの役に立つ。
身近な地域や社会に貢献する。
子どもたちや後々の世代のために良いものを伝えていく。
教育を…社会を…というと自分には関係ないのではないかと思ってしまいがちです。
しかし教育も社会も、一人ひとりの考え方や行動が積み重なってできています。
良き伝統や文化といったものも、つくりあげてきたのは一人ひとりの人間です。
そして人はいなくなっても、つくったものは残り、続きます。
体育・教育を通して、人の役に立つ、後世に良きものを伝える。
そんな生き方をしたいと思います。
髙橋 彬
【Profile】
茨城県出身(水戸桜ノ牧高校・鹿屋体育大学卒業)
2013年からNPO法人健康づくりフォーラムで活動
2013年度:鹿屋市地域健康づくり支援事業(健康達人教室)、文部科学省スポーツコミュニティ形成促進事業での小学校体育指導
2014年度:年賀寄付金配分事業(健康達人教室)、文部科学省地域スポーツとトップスポーツの好循環推進プロジェクトでの小学校体育指導
2015・2016年度:鹿屋市幼児体育能力向上支援事業(保育所でのコオーディネーショントレーニング教室)
2015~2019年度:鹿児島県教育委員会「たくましいかごしまっこ育成推進事業」
(派遣先学校:錦江中学校・細山田中学校・鹿屋中学校・寿北小学校・上小原小学校・寿小学校・国見小学校・内之浦中学校・財部小学校・新城小学校・境小学校・菅牟田小学校・持留小学校・祓川小学校・大根占小学校・国見小学校・高隈小学校・西原台小学校・安楽小学校など)
2018年からNPO法人健康づくりフォーラム事務局長
現担当事業
・定期教室(たかはしあきら体育学校)指導
・こども園指導(コオーディネーショントレーニング)
・トレーニングおよびスポーツ指導(団体・個別)
・運動発達相談
・運動大好き かごしまっこ育成推進事業(鹿児島県教育委員会)での学校体育指導
・自治体での生活習慣病予防教室、介護予防教室、保健指導事業、ころばん体操など