口腔発達と運動発達 口腔トレーニング

「スポーツが上手になりたい」「足が速くなりたい」という場合、その練習をするのはもちろん必要なのですが、その前に大切なことがあります。

特定のスポーツ技能を高めるにはその基礎となる身体を動かす能力や感覚が必要です。

ケンケンをするときには片足で体を支えてバランスをとることはもちろん、上半身の反動をうまくつかってジャンプすることが大切です。

おんぶをするときには人を背負って踏ん張れる力も必要ですが、うまく背中に乗せるために自分と相手の体の位置や動きを把握する感覚も大切になります。

人はさまざまな感覚や能力をつかいながら運動を学習していきます。

粗大な運動から微細な運動へ

体幹部の運動から手足の末端部の運動へ

細かな動きができるようになることでまた体幹の動きも発達していきます。

専門的なスポーツ技術の習得が難しい・苦手というとき、その練習をひたすらするのは非効率的なだけではなく、偏った体のつかい方により故障を招く・好きでスポーツをしていたのに嫌になってしまうなどの可能性もあります。

掛け算や割り算がわからなかったら、足し算や引き算がきちんと理解できているか確認しますね。

足し算や引き算の勉強の前には、数の概念、抽象的な理解が進んでいることが大切です。

走る・跳ぶ・しゃがむ・ぶら下がる…などの基礎的な運動

歩く・立つ前にしていた、赤ちゃんのときのハイハイ、寝返り、首座りなどの運動

これらの運動が非常に重要です。

体を動かすのが苦手なとき、これらの運動がうまくできていなかった、抜けがあるといったことが多いです。

何歳になってからでも、これらの動きを丁寧に復習することで体の動きや運動能力が改善します。

そして大切な運動の中でも見逃されがちなのが「舌」「くち」「あご」の運動です。

赤ちゃんは哺乳をするときに口を大きく開き舌を動かします。その動きで舌や口腔の動きを発達させていくのです。

以下、舌の運動や口腔発達についての動画の紹介です。

口腔体操は食事の前などにすると習慣化しやすいです。大人も高齢者にも大切な運動です。ぜひやってみてください。

参考動画

【舌の吸い上げトレーニング】川邊先生


【離乳食や口腔発達の話】町村先生(はびりす)

再生リスト【川邊先生口腔】

再生リスト【口腔みらいクリニック】

なぜ運動をするのか

入学おめでとうございます 運動教室で大事なこと

2019年 04月 07日

4月になり、今年度の教室もスタートしました。

遅くなりましたが卒園、卒業だった皆様、おめでとうございます。

今週はいよいよ入学式。小学校・中学校生活のスタートですね。また、引っ越しをした人は学校も住む場所も新しくなります。

それぞれ新しい環境に少しずつ慣れて元気にがんばっていってくださいね。

新年度の教室はさっそく2日から始まっています。はじめのうちは新1年生は大変かもしれませんが、周りの子らがうまくフォローしてなじんでいくと思います。

メンバーも少し変わります。新学年になりましたので、気持ちも新たにがんばっていきましょう。

さて、気持ちも新たに私の運動教室の目的や考えについて書いてみます。

大事なこと

その①【身体をきたえる】

運動する前に、病気にならないで健康に生活できることが大切です。勉強をするのにも大人になって仕事をするのにも、健康や体力は必要です。元気な時はあまり感じませんが、ひどい風邪を引いたり、大けがをして体を動かせなくなったりすると健康のありがたさがよくわかります。

「身体をきたえる」ということは、日常生活の立つ・座る・歩く、机で勉強する時の動きや姿勢にも関係があります。身体をしっかり動かせることは、字を書くことや集中して話を聞くことにつながるのです。

その②【頭をきたえる】

「頭をきたえる」というと「勉強」が思い浮かぶでしょうか。漢字の練習をする時、算数の問題を解く時など。

運動の時はどうでしょうか?体はつかうけど頭はつかわないでしょうか。

オニごっこを例に考えてみましょう。

まずオニがどこにいるか注意しますね。どのくらいの距離か、どこを見ているか、こちらに来るだろうか。

オニがこちらに来た場合、どこに逃げたらいいだろうか、周りはどんな状況か、むこうに行ったら行き止まりだから捕まるかもしれない、あっちの方が逃げやすそうだなど。

氷オニだったら、捕まった仲間を助けなければ…どこにいるか、オニの動きは、他の仲間はどんな動きをしているかなどなど。

意識しないかもしれませんが、これらのことを考えながらオニごっこをしています。それも状況は常に変化します。その瞬間に周囲の状況、オニの注意、相手までの距離、スピード、タイミング、すべてを自然と頭の中で計算して動いているのです。すごいですね。

人間の脳が発達したことと手の機能の発達には深い関係があると言われています。身体をつかうことは頭をつかうことなのです。

その③【心をきたえる】

運動(遊びも含みます)をする時、体も頭もつかいます。それと一緒に心(気持ち)も動きます。

体を動かすと楽しい

たくさん走ってきつい、ハアハアくるしい

オニごっこで捕まってくやしい

試合がおもしろかった

色々な気持ち、感情が出てきます。

うまくいったりいかなかったり、試合の時などあーだこーだと言い合いになることもあります。

運動(遊び)をする中で、友達とのコミュニケーションが自然と生まれます。

相手の話を聞く、気持ちを考える、アイデアを出し合う

意見がぶつかることやケンカになることもありますが、そうした友達との関わりを通して、体だけではなく心もきたえられ成長していきます。少し難しい言葉にすると社会性が身につきます。

さてさて「運動教室」というのは「運動を上手に」するためにというのが一般的かもしれません。

しかし私は「運動が上手」や「足が速い」などというのは人生において大して重要ではないと考えています。スポーツのジュニア育成においてもそれが目的ではいけないと思います。

(運動・体育・スポーツ、それぞれ言葉の定義はちがうのですか、ここでは同じようなものと考えて問題ないと思います)

大人になったら縄跳びなんてしません、使いません。(中学生になったらもうしないかな)

跳び箱もしません。できなくても何ら困りません。

運動ができるのが大事、できるからすごい、できないからダメ

ではなくて

運動を通して体や頭や心をきたえるのが大事なのです。

これは他のことにも当てはまると思います。

例えば中学校で部活をする場合

もちろん好きだったり興味があったりでするのでしょうから、練習して上手になる、試合やコンクールに出る、成績をあげるのは良いことです。

ただ、上手下手、勝つ負けるなどの結果だけにとらわれるのではなく

その部活を通して体、頭、心をきたえる。

それに取り組む過程で何を学ぶかを大切にしてほしいと思います。

部活に入ったり何か新しいことに挑戦する人はがんばってくださいね。

高橋

https://tomproject.exblog.jp/239211294

鉄棒・逆上がりに対する考え方

以前に書いた鉄棒の記事、8年前…

「逆上がり偏重」https://tomproject.exblog.jp/23047769/

逆上がりや跳び箱は体育の代名詞のようにされる印象ですが、それらができるかできないかに囚われているのはもったいないと考えています。

逆上がりができる要素として、大雑把にいうと

・鉄棒をつかんで体を引き寄せる力

・脚の振り上げ

・体(股関節周辺)を鉄棒に近づけ回転する

などがあります。

逆上がりや鉄棒自体の練習することも、これらに関する能力を養うことになるのですが、「できない」状態の動きを繰り返しても「できる」動きや感覚の習得にはつながりにくいです。

鉄棒をつかんだり体を支持したり、揺れる、脚を振る、回るなど、できる動きからしていきましょう。また逆上がりではない他の色々な技をしてみましょう。

そして上記の要素や能力の獲得に必要なのは、基本的な身体の能力や使い方、平衡感覚です。

鉄棒がすごく怖い、手を放して落ちて怪我をしてしまうなどは、鉄棒をする以前の基礎的身体能力が育っていない状態です。無理に鉄棒をしても、怖いきつい痛い…と嫌になってしまう可能性があります。

鉄棒に必要な基礎的な体力や運動技能を育てるトレーニングができるとよいです。また鉄棒をするときには無理せず怖くないところでしていきましょう。

首の反射が統合・抑制できていないと、顎が上がる・腕が伸びる・手が開いて鉄棒から落ちるということにつながり、逆上がりができないのはもちろん怪我もしやすくなります。

逆上がりをするには、脚を振り上げて骨盤と脚を鉄棒に近づけるときに、顎を引いて・肘を曲げる(引き寄せる)ことができると技の成功に近づきます。

逆上がりができないのは「ダメ」ではなく運動発達の目安として、できないのであれば原因や運動の課題を考えてほしいと思います。そして体を揺らしたり回転させたり、平衡感覚を刺激する大切な運動ですので、怪我なく安全に、できれば鉄棒の楽しさも味わえるよう取り組んでもらいたいですね。

ちなみに私は鉄棒は苦手で、逆上がりは4年生か5年生のときになんとかできるようになったと記憶しています。鉄棒は嫌いだったので体育の授業のときくらいしか触りませんでしたね…

高橋

https://tomproject.exblog.jp/243221779

「治らないという考え方は治りませんか?」「発達障害、治るが勝ち!」

発達障害は近年は「神経発達症」というようになっています。

その定義は広く、人によって症状などもさまざまです。

原因は「現時点では生まれつきの脳機能の問題が有力です」などとされ「先天性」だから「治らない」といわれてきました。

しかし実際に、発達障害と診断をされていたが、診断が無くなった人、軽くなった人がいます。

原因や治療についても研究されています。日本でも脳神経内科で治療を進めている医師もいます。

「治せます」と言われると、良いと聞いたことをすべて試してきた、どんなに努力しても治らなかった、など当事者の方しか理解できない思いがあるのはわかります。

しかし「生まれつきの脳機能の障害です」「治りません」と言われたとき、それを聞いた方たちはどのような気持ちになるのでしょうか。

先天性だからどうしようもないのか

脳機能の障害だから脳が発達しないのか

一生このまま成長できないのか

将来勉強したり働いたりできないのか

治らないから何もできないのか

想像することしかできません。

しかし「生まれつきです」「治りません」という言葉は、どのような意味であるのか丁寧に説明しなくてはならないと思います。

私は発達障害の専門家ではありません。

ではなぜその理論や改善法を学ぶのかというと、誰にとっても役立つと考えているからです。

発達が完璧な人はいないし誰でも多少は発達に凸凹はあります。

障害などある人の脳神経系や筋機能、症状などを改善するものなら、誰にとっても有用なことが多いはず。

運動スポーツが専門だと、フィジカルトレーニングやスポーツスキルの情報にばかり目がいきがちです。

体育大でも発育発達の概論は授業で学びますが、乳幼児の発達や口腔のことなどについて関心がある人はごく少数。私もまったく知識はなく、十数年前くらいから知るようになりました。

体育スポーツ指導をするなら、学校関係の教員などにとっても、こどもの発育発達について、口腔について、発達障害について学ぶのは必須ではないかと今では考えています。

分野に関わらず一般的には無理といわれていることでも、驚くような成果・実績をあげている人はいます。

エビデンスがまだない…ガイドラインになっていない…などと言う前に、実例を見て理論や機序を調べて、とりあえず実践してみて結果をみてみる。

自分や家族が改善すればよいのです。そしてそれは貴重なひとつの事例であり、エビデンスになっていくのです。

「発達障害は改善できる」というと「治りません」「勉強しろ」「デマ」「インチキ」などと言ってくる人がいます。

「発達障害が改善したのだとしたら、そもそも誤診・そうではなかった」「成長にともなって特性が軽くなっただけ」などと言ってくる人やそれに賛同する人もいます。現在でもそのような人らが多数派だと感じています。

アレルギーやそのほかの病気でも同じような話がありますが、「これは治りません・その治療法にはエビデンスがありません」などと言っておいて、実際に治った・改善した事例に対しては「自然に治ることもある」「環境が変わると症状が出ないことがある」「それが原因かはわからない」などと言い出す。

治した人たちは「治らない」と言われても、色々考え調べ実践して結果を出しています。
「発達障害、治るが勝ち!」は花風社の本ですが、まさにその通りです。

神経発達症の原因は「現時点では生まれつきの脳機能の問題が有力」などと言われています。

「現時点では」「原因不明なところがある」「原因や治療法は確立されていない」とされており「治らない」が常識です。

それは改善しない、社会生活ができない、勉強ができるようにならない、働けるようにならないということではありません。

状態や症状の強さも人それぞれですし、改善が難しいことももちろんあります。

「治る」と表現するのが違うのでは、という意見はわかりますが、「改善」も「発達」も「成長」もできます。

仮に五体満足で何も障害がなく生まれてきたとして、何もせず何も学ばずにいたらどうなるのか。

障害などのあるなしに関わらず、発達すること学ぶことは誰にとっても必要です。

高橋

花風社の本

https://www.kafusha.com

◎最新刊の「発達障害治療革命!脳神経内科医からの提言」は脳神経内科の見地から神経発達症の原因や治療法について書かれています。

そのほかの本もおすすめです。

『偏食支援・指導で絶対NGトップ3』発達障害臨床研究会(宇佐川研)のページ

https://usagawaken.com/hensyoku_shienng3

はびりすホームページ

赤ちゃんの運動発達の目安

赤ちゃんの発達過程、運動発達には順序や時期があります。

こどもの発達のことだけでなく大人の健康診断の数値などでも、平均や基準値から外れると「異常ですか?」「どこか悪いですか?」と心配になる方がいらっしゃいます。

健康状態や発達段階がどうなっているか、平均値・基準値はもちろん目安になります。ただし数値のみで判断はできませんし、問題がなくても基準値から外れていることもあります。基準の値などを参考に実際にその人をみて考えていくことが必要になります。

発育発達の場合は特に個人差が大きいので、発達の目安から外れていたり他のお子さんと比べて早い・遅いがあったりすると心配になりやすいですね。まず個人差があること、同じ生後○か月でも在胎期間が違うことがあります。少し大きくなってからの話だと幼児、小学生などは同じ学年でも生まれ月によってだいぶ違いがあります。

さて、赤ちゃんの運動発達ですが、口や舌の動き、目が動くようになる、手を握る、手をなめる、頭を持ち上げるようになる…だんだんと色々なことができるようになってきます。

運動発達の目安とされるものは、ハンドリガード・指しゃぶり(2~4か月ごろ)、首座り(3~4か月ごろ)、寝返り(5~6か月ごろ)、足なめ(5~6か月ごろ)、お座り(6~8か月ごろ)、ずりばい(6~8か月ごろ)、ハイハイ(8~10か月ごろ)、高這い(10か月ごろ)、つかまり立ち(10~12か月ごろ)、つたい歩き(10~12か月ごろ)、ひとり歩き(1歳~1歳3か月ごろ)…などあります。※記載した時期は目安です、2・3か月遅いもしくは早いこともあります。

(それと「首座ってきたね~」などと言われることがありますが、首座りにも段階があり、座ってきはじめたところなのか・前後左右方向しっかり座っているのか確認したほうがよいと思います。)

これらの目安を参考に、早い遅いや動きが気になるなど発達に心配なところがあれば、専門機関に相談してみるとよいかもしれません。

寝返りが早かったのはどうしてだろう?足をなめる動きをしないのはどうしてだろう?ずりばいで左右交互に手足が動かないのはなぜだろう?

このような課題があったとして

首や背中の緊張が強いのかもしれない。

背中側の緊張が強く、お腹側の筋肉がうまく働かず、腰や脚を持ち上げづらいのかもしれない。

向き癖があり首や肩の緊張や動きに左右差があるのかもしれない。

ATNRなどの原始反射の影響で首と左右の動きにぎこちなさがあるのかもしれない。

首や背中の緊張を緩めるような手技をしてみよう。

屈筋に刺激が入りやすい姿勢になるようにしてみよう。

抱っこの仕方や寝る時のまくら、ふとん、姿勢などを変えてみよう。

仰向けでの顔の動きや手の動きはどうだったか?手なめや指しゃぶりはどうだったか?手の動きや遊びを促すようにしてみよう。

など、さまざまな仮説とその改善策が考えられます。

寝返りで反っている・左右差がある、ずりばいやハイハイで左右の動きに違いがある、○か月になったけど○○ができない、寝返りしないでずりばい、ハイハイしないで立つ…

基準となる運動発達に対して早い遅い、つまずく、段階を飛ばすなど、多くの疑問や課題が出てきます。

それらの課題に対して「寝返りがうまくできないから寝返りの練習」「お座りができないからお座りの練習」のように取り組むと上手くいかないかもしれません。

ある運動ができるようになるためには、それに必要な身体能力や感覚が育っていることが必要です。

寝返りするためには頭を持ち上げて左右に動かす、体を丸めて脚を持ち上げる、首や肩・骨盤をひねって体を回転させるなどの動きを組み合わせます。

これらの動きや感覚を育てるのはそれまでに毎日してきた周りを見る目や頭の動き、哺乳運動、仰向けでの手足のバタバタ、手足をさわる・なめるなど、寝返り前の身体運動です。

発達段階にあわせた動きを丁寧に。

かけ算ができない時には足し算・ひき算に戻る。

数的概念がわからない時には数・長さ・重さ・時間を身体で感じ理解するために運動する。

分数でつまずいた時にはケンケンパーなどで移動の距離と歩数、リズムの感覚を身体に入れる。

つまずいた時できない時は前の段階から見直して復習してみましょう。

赤ちゃんの場合には、体の反りが強いことが後々の育ちに影響を与えることがあり、特に新生児期ごろは、丸くなった姿勢で寝る・抱っこなど気をつけてあげることが大事だと感じます。

それと、課題や問題が見つかったときに、それまでを振り返って後悔することがあると思いますが、気づいたときから、今できることに取り組んでいきましょう。

大人になってからも身体の不調や動きの悪さの原因に「舌を全然つかえていなかった」「頭をきちんと持ち上げられていなかった」「腰がきちんと座っていなかった」などがあることに気づきます。そしてそれらの課題に対しても首上げ、寝返り、ずりばいなどに丁寧に取り組むことで改善できます。

高橋

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