なぜトレーニングで寝返り・ハイハイをするのか

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2019年 04月 09日

トレーニング内容について、ハイハイなどの動きを大事にしています。それらの動きに取り組む理由、運動発達について書いています。

【基本となる動き】

人間は生まれてから日々成長し、運動に必要な能力や感覚も身につけていきます。特に運動において大切なのが1歳までの運動発達です。少しずつ視覚や聴覚が発達し、ものが見えるようになり、音がした方を向くようになります。ものが見える距離や範囲が広がり、眼球や首の動きがしっかりしてくるとよりそれが広がります。

仰向けから首、体をひねり向きを変え、だんだんと寝返りもできるようになります。寝返りができると今まで見えていたものが反対になります。こどもにとって本当に世界がひっくり返る体験であります。寝返りができるようになることで、自分で移動できる範囲が広がり、さらにうつ伏せでの動きも増えます。

寝返りやうつ伏せの動きにともない、平衡感覚や目の機能も発達します。赤ちゃんが大きな声で泣く、哺乳、呼吸、手足をなめるのも、口や舌、全身を使った運動であり、日々発達していきます。赤ちゃんは毎日これらの動きをしながら体を成長・発達させ、首がすわり、寝返りができ、座れる、はう、そして立てるようになっていきます。

ズリバイをすることで四肢が連動した移動の動きを自然と身につけます。足の親指で床を押して進み、足の機能も向上していきます。ハイハイで手でしっかりと体を支えられるようになります。前後にバランスをとり、自分の体をコントロールして移動できるようになっていきます。

これらの動きをしながら、こどもは段々と上手に体を動かせるようになっていきますが、近年これらの運動が足りない、発達が不十分なため、体を動かすことが苦手というこどもが増えているように思います。

ハイハイをしないですぐに立つ、歩く、これらは喜ばしいことではありません。その時期に必要な動きを十分にすることで、体の機能や感覚が育ちます。こどもの運動能力低下の例としてよく挙げられる「転んでも手が出ないで顔を打つ」というのは、多くの要因があり単純には言えないのですが、ハイハイの運動(前方への重心移動・バランス変化)で平衡感覚や反射、体を守る動きなどが発達していない状態だといえます。

「幼少期の運動発達が完璧」という人はいません。運動発達・学習のためには、誰にとっても寝返り・ハイハイなどの運動をやり直すことが大切です。特に「運動が苦手」という場合、これらの運動をしっかりとしていないことが多いです。

幼少年期の運動で重要なのは、跳び箱や鉄棒などの種目を、いわゆる先取り学習することではありません。じゃれつき、転がり、体を思い切り動かし、さまざまな感覚を刺激することで、運動機能は発達していきます。走り回りたい、ぐるぐる回転したい、高い所に登りたい、グラグラするのが好き、これらはこどもが自然と求める運動刺激です。これらの欲求を満たす運動や遊びが、こどもに必要な運動能力を一番に伸ばすものでもあります。

運動教室では、

◎成長発達に重要な動き(寝返り、ハイハイなど)をしっかりとすること

◎平衡感覚をはじめ皮膚感覚など様々な感覚に刺激を与えること

◎運動に親しみ、運動を通して考える・イメージする力、コミュニケーションを育む

これらを大切にしています。小学生になってからは、自分から動く・考えることがよりできるように、指示待ちにならず「主体性を発揮する」ことができるようにしていきます。


以下は以前に書いた年間トレーニング内容についてです。(一部修正)

【体幹・平衡系の運動】

◎平衡(バランス)能力

・人は視覚や触覚、筋肉や関節、前庭覚からの情報によって、体の位置や傾きなどを把握し体を動かしています。

・体の回転や揺れ、バランス、姿勢や視線の変化によって、平衡系の刺激を与えます。

・座った状態、仰向けの状態から立ち上がるエクササイズなども体幹・平衡系のトレーニングになります。

◎寝返り、ハイハイの動き

・こどもは運動発達の過程で獲得する寝返りやハイハイの動きによって、体の使い方を学習するとともに身体機能を高めます。

・寝返りは、首や背骨、骨盤の動きによって体を回転させます。体の移動、身体操作の基盤となる運動です。体の軸を使った動きを引き出し、また、転がることによって平衡系の感覚を刺激します。

・這う動作は、背骨の動きと肩から腕、骨盤から脚の動きを連動させて、体を移動させます。ハイハイ、高這いでは手足で体を支えます。体重を支えて動くことで、手と足のアーチが育ちます。手足の指がしっかりと曲がり・伸び・開くことが、体を支える土台になります。

・また、手足の細かな動き、器用な動きも、体幹部の動きや自分の身体の感覚が育つことが大切です。体幹から手足へ、粗大な運動から微細な運動へと発達します。

【走る・跳ぶ(移動系)運動】

・走ったり跳んだり、体が揺れることも平衡系の運動刺激になります。

・足の動きもですが、体幹部をうまく使えているかが重要であり、這う・四足の動きをしっかりすることが大切です。

・走る・跳ぶ力を育てるとともに、色々な方法やリズムで移動したり跳んだりするトレーニングを通して、自分の動きを周りに合わせる、リズム・タイミングと動きをつなげる能力を高めます。

【操作系運動(ボールなど)】

・投げる捕る技術の前に、まずボールに触れ、慣れ、なじむ、楽しむことを重視します。

・自分の体の近くからの操作感覚、空間認識を広げていきます。

・ボールの認識を少しずつ遠く・高くしていき、スピードや距離感、リズム感をつかみます。

・投げる・捕るのも、手の動きや上手にできるかどうかよりも、体幹から動いているかどうかがポイントです。

【ゲーム系運動(オニあそびなど)】

・オニごっこの場合は、直線的に走る速さだけではなく、スピードを変えたり止まったり、方向転換するなど動きを変えることも必要です。

・また、周りの状況(オニの動き、周りの人、物、場所)を認識しながら、相手との距離や動くタイミング、走る方向や場所を考えることになります。

・オニが複数になったり、ルールが組み合わさったり、さらにオニごっこから発展させたゲームになると、さまざまな判断、作戦、コミュニケーション、戦術的な思考などが求められます。

◎どの運動についてもですが、こどもの場合は、言葉で教えずデモンストレーションをして見せることが大切です。

◎筋・関節・皮膚からの体性感覚(体の位置、動き、力)・運動覚(関節運動の方向・運動の状態)が視覚・聴覚などの感覚の土台となり、視覚・聴覚などが言語や思考を支えます。低年齢ほど「体性感覚」と「運動覚」を重視します。

これらに加えて、顎、足指の動き・トレーニングも大切に考えて取り組みます。

◎近年のこどもの口(顎・歯)の問題として

・顎が小さく、永久歯がきちんと生える口腔スペースがない

・噛み合わせ・歯並びの悪さ、低舌位

・口唇を閉じられず口呼吸になることによって、アレルギー性疾患や病気になりやすいといったことがあります。

これら口腔機能の発達には、胎児期からの栄養状態など様々な要素が関わっています。

乳幼児期に気をつけたいこととしては

・授乳姿勢、食事・睡眠時の姿勢

・哺乳や食事での口・舌の使い方

・食事の内容や栄養など

運動教室の中では、うつ伏せの姿勢で口を大きく開く動きをします。

このとき、口を大きく開く、特に上顎を大きく動かして開くようにしています。また舌がしっかり動くことや普段の舌位置も重要です。

◎足指の問題

・土踏まずの未形成

・外反母趾・内反小趾

・寝指(小指や薬指の腹が真下ではなく内側に向いている)

・かがみ指(指が曲がっている。上から見ると爪が真下を向いて見えにくい)

・浮き指(指が床についていない)

室内での運動教室の際は裸足で運動していますが、

普段から足指を使って動くこと、足に合った良い靴を選ぶことが大切です。

・足が靴の中で滑らないもの(マジックテープの場合折り返し付きの2本以上)

・サイズのあったもの(指先に1cm余裕をもたせる)

・インソールの跡を見たときに、指が5本ともついているか

◎口の周りの筋肉、舌の機能を高める体操に「あいうべ体操」があります。

みらいクリニック(福岡県)の医師 今井一彰 先生が考案された、口・舌の体操です。

足指の体操についても、ゆびのば体操があります。

【みらいクリニックHP「あいうべ体操で口呼吸を鼻呼吸に改善」】

→ https://mirai-iryou.com/aiube/

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