こどもの体力運動能力低下について

2017年 08月 14日

https://tomproject.exblog.jp/237547076

「時間・空間・仲間がない」とよく言われます。

その通りだと思います。

ですが、幼稚園や保育園でも、外遊びなどで体を動かすことを大切にし、活動時間を確保しようとされています。

体操やスポーツ等さまざまな体育指導を取り入れているところもありますね。

こどもが遊べる子育て支援センターのような場所や、いろいろな遊具がある公園もあります。

スポーツ教室やスポーツ少年団では、週に3回、4回、何時間も活動しているところもあるでしょう。

時間も空間も仲間も、減少というより、内容・質が変化しているのかなと思います。

大人になると、滑り台を何回もしたい、ブランコやシーソー、ジャングルジムでもずっと遊びたい、という人はあまりいませんね。

(やってみると楽しいですけどね。)

こどもは高い所に登ったり、グラグラ揺れる物に乗ったりするのが大好きです。

体の揺れや回転、バランスをとることは、平衡感覚を刺激します。

これは運動発達に必要な刺激であり、こどもは自然とそれらの刺激を求めて動こうとします。

何か物があったら触ってみたい、叩いてみたい、投げてみたい、上に乗ってみたい…

飽きるまで、気が済むまでしたら次

おもしろそうなことを見つけたらまた次

さまざまな刺激、感覚や運動を求めて動きます。

新たなことに興味を持って、いろいろな運動や感覚を次々に経験することで、成長発達していくのですね。

こどもの時期に多様な運動を経験することの必要性は広く言われています。

ジュニア期のスポーツにおいても、ひとつの種目や動きに偏らないようにする、たくさんの種目に触れる。

これらの大切さは、何年も前から言われており、スポーツに関わる人にとっては常識だと思うのですが…

小さいときから野球。サッカー。ひとつの種目に打ち込むことが良し。日本ではそうなっていることが多いように感じます。

野球界、サッカー協会、各種団体でも、競技人口の減少や選手育成のために、さまざまな取り組みがされています。

プロ選手が野球教室をしたり、ティーボールやルールを変えた野球のゲームをしたり等

それらの内容も、幼児や小学生へのトレーニングとしてどうかと思うものばかりです。

だいたい野球をしていた人なんて、野球の練習ばかりしてきた訳で、プロだろうが何だろうが、幼少年期のトレーニングや指導については全く知らない・もしくは間違った考えの人が多いです。(高橋の主観です)そうではない素晴らしい指導者もいらっしゃいますが。

そして、それらの取り組みのほとんどが

「野球」の競技人口を増やしたい、「野球」の競技力を上げたい

という自分の競技のことしか考えていないものになっていると思います。

小さいときから、たくさんのスポーツに触れる

多様な運動スキルを身につける

もちろん好きなスポーツがあるなら取り組む

他の種目もしてみたいなら、2つでも3つでもやってみる

興味が変わったら、違う種目に変えてもよい

個人や種目にもよりますが、専門特化するのは、高校以降で十分です。

その方が結果として各競技の普及・活性につながると思います。

サッカーに負けないように

野球人口を増やしましょう

バスケットを幼児から普及させましょう

バレー協会でも対策を考えましょう

そんな風に考えても良くならないのでは。

「トップアスリート発掘・育成」等と言った事業で、体力測定や選抜テストもされていますが

結局、体が大きい、エネルギー系のパフォーマンスが高い、早熟型の子が選抜されやすく

生まれ月による影響や早熟傾向が有利になるような、偏りのある選抜・育成方法がされていると思います。

小学生のスポーツ団体での活動

野球だけではなく、サッカーもして、バスケットもして、体操もして、柔道もして…のように色々すれば良いのに

野球・ソフトボールのチームだから

毎回野球の練習

ランニングをして準備体操をして、キャッチボールをして、ノックをして、試合をして

素振りをして、腹筋・背筋をして、肩の筋肉を鍛えているつもりでチューブを引っ張って…

それで本当に高校、大学、それ以降でも活躍できる選手の育成につながっていますか。

サッカーや野球をしている子で

脚の筋肉がガチガチ、前屈で床に手が届かない、足裏全部をつけてしゃがめない、

腕をあげて(バンザイ)いくと耳より後ろまでいかない

肩が前に出て背中も丸まっている、腰も丸まっている・反対に骨盤が反っている、姿勢が悪い

そんな子がいませんか。

小学生の時から肩が痛い、肘が痛い、足が痛い…中学、高校で思い切りスポーツできませんよ。

自分の教室でも現在、足の怪我で1ヶ月ほど固定・安静になってしまった子がいます。

足関節に負担がかかるアライメント、足の状態だったので、怪我が発症する前に何とかできれば良かったのですが

トレーニングで改善、もしくは他の手段で予防することができなかったので本当に申し訳なく思います。

キャンプにも参加予定だったのですがキャンセルになってしまいました。

楽しみにしていた本人が一番がっかりしていると思いますし、一緒に行く予定だった同じ教室の子たちにとっても残念なことです。

故障によって、目標にしていた大会に出られない、スポーツを辞めないといけない。その子の人生に影響があります。

スポーツで故障させてはいけない。

もちろん競技を続けていく中で、競技力のレベルが上がるにしたがって、厳しいトレーニングで追い込むこと、故障と隣り合わせの状態にもなります。

無理をしてでも試合に出なければいけない状況もあるでしょう。

それがいつから必要なのかということです。

高校野球では

「野球は高校まで、卒業したら大学に行って勉強・社会人になって仕事。野球はしない。」

だから、痛みや故障があっても、無理をして試合に出る。肩肘が壊れてでも投げる。というようなことがあります。

考えは人それぞれ、その選手が自分で考えて納得しているなら結構です。

「野球は高校までで、卒業後は別のことに専念する。」という決意も素晴らしいことだと思います。

ただ、高校卒業後も野球が楽しめるように、ボールがもう投げられないような状態にはならないで欲しいです。

野球が大好きでしていたのでしょうから。

高校野球、高校での部活動は素晴らしいものでもありますが、そこがゴールの様になっている現在の日本のスポーツのあり方、指導や環境には問題があると思います。

大げさに言えば

今のスポーツの選手育成は

それぞれの選手が成長して階段をのぼるのではなく

横並びにふるいにかけられて、つぶれなかった選手が上に行ける、故障しなかった選手が生き残る

そんな形になっているように思います。

下手な子は下手なまま

同学年で上手い子(早熟型の子)が選ばれる、試合に出る

早くから試合に出ていた子は試合などの経験ができる

同学年の晩熟型の子は試合などの機会が少ないまま

そして次の学年へと進んでいく

小学生のスポーツ教室や少年団、中学高校の部活動を見ても

練習や試合の取り組み、選手の選抜や育成について、どこまで考えているのかなと感じます。

自分たちのような体育指導者、スポーツ関係者は、こどもたちに指導する責任をもって研鑽していかねばと思います。

高橋

「逆立ちも」できるのか「逆立ち(だけ)は」できるのか

2017年 03月 26日

https://tomproject.exblog.jp/23744708

スパルタ式保育園で、逆立ち、バク転、跳び箱ができるようになったのに
卒園して、小学校3年生くらいになると、大半の子は「逆立ちすら出来なくなる」
なぜなら義務教育だから
跳び箱も一段からスタート…
周りのヌルい環境に適応してしまうから
〇〇も環境が大事なのだ!
と、幼児教育を例にして、環境の大切さを説明しているのを目にしました。
(体育関係ではなく、まったく別分野の専門の方の話です)

こういった話に対しては
「そーだ、そーだ、小学校の教育が悪いんだ」
「小さい時からもっと鍛えないからだめなんだ!」
「学校だけではダメだ、スポーツ教室に行くようにしないと!」
というような考えもあるようです。

さて、なぜ「逆立ちすら出来なくなる」のか?

小学校で練習しないからでしょうか?
できるようになったのに?
たしかに時間がたつとできなくなる、忘れるものもあります。
漢字、算数、英語などの勉強も
鉄棒、昔はできたけど、お腹が出て動けないということもありますね。
「自転車に一回乗れるようになると乗り方を忘れない」というのは学習や記憶の説明として例によく挙げられます。
一度覚えたはずの運動がなぜ出来なくなるか、下手になるのか。

小学校に入る前に逆立ちも跳び箱もバック転もできるのだから、全員体育がすごく得意、小学校でものすごく活躍するはず。
しかし、そうでもない。
小学生になって練習しないからなのか。
たしかに学校の体育にも多くの課題があるでしょう。
でも逆立ちくらいだったらどこでもできます。体育の時間なんかはできる子は勝手にしているはず。
そんなに出来なくなる、忘れるようなものでしょうか。

逆立ちも跳び箱もバック転もできるのだから、運動神経?バツグン?
逆立ちも?跳び箱も?バック転も?
逆立ちだけ?跳び箱だけ?バック転だけ?


「も」でしょうか「だけ」でしょうか

逆立ちの練習で、逆立ちだけ出来るようになっている

開脚跳びの練習で、開脚跳びだけ出来るようになっている
バック転の練習で、バック転の技能だけ上達しています

何を当たり前なことを?それが練習?

似た技能、関連する運動もありますが

ひとつの運動の完成度を高めることと、運動能力が高まることはイコールではありません。

さまざまな運動能力や技能を獲得しながら、その運動も「できる」ようになるのが

「逆立ちも」できる状態

特定の運動ばかり、スポーツの練習を繰り返して、その運動が「できる」ようにすることは
「逆立ち(だけ)は」できる状態

というとわかりやすいかもしれません。

丸暗記で、道のりと速さと時間の計算式を覚えて答えが出せるのと

こう考えたら良いのでは?こうしたらどうなるか?なるほどそういうことか!と距離や時間の概念を理解しながら、答えを導き出すことができる。

どちらが本当に理解しているでしょうか。数学的力がついているでしょうか。その後の学習の伸びはどうなるでしょうか。

ある程度なら丸暗記的学習でも通用します。

しかし、ある程度で頭打ちになります。


幼児期の学習は、限られた運動のみに特化してするべきではありません。

競技能力の高い選手になるためには、さまざまな要因があります。
体操競技などは特に、小さい時からそれらの運動を経験しておくことや、できる環境があることは大事であると思います。
幼児の時から体操に親しむことはもちろん、好きになったのならそのまま継続して取り組めることは良いことです。

しかし、体操競技であっても、早くから特定の種目を完成させることを目的に練習をするのは、将来の競技成績を考えても良くないと思います。
跳んだり跳ねたり回ったり、これらは体操競技そのものの動きでもあると思いますが
いろいろな動き、体操に必要なさまざまな運動能力を広く身につけて育てていくことが重要ではないでしょうか。
特定の技の完成度を高めるのはもっと後、幼児期にすべき練習・学習のしかたではない。

幼児なのに、早くに出来ると、すごく見えます
天才とか、スーパーキッズとか言われます

逆立ち「も」できる、跳び箱「も」できるのは良いです

逆立ち「しか」できない、跳び箱「しか」できないのは違います


体操や運動に限らず、その時期を過ぎると、学習や習得がむずかしくなるものもあります。

しかし体操競技であっても、高校や大学から始めても素晴らしい競技能力を身につける人もいます。


赤ちゃんが
早く歩いたから、将来足が速いか
早くしゃべったから、頭が良く?なるか

とにかく早く、早く。小さいうちから鍛えよう、練習しよう、という考え
ちょっと単純すぎる例えなのですが、、

陸上100mだと
小学生で12秒!だから
中学生になったら11秒
高校生になったら10秒
このままいけば9秒台

野球だったら
130km/h投げるスーパー小学生
中学校で140km/h
高校で150km/h
まちがいなくプロに入って160km/h

こんな考えのように感じます。
そんなに単純ではありません。

小さいときには広く、広く。
教え込むのではなく、自分から学ぶように。

運動は本来、自然のなかで遊び、身体を動かし学んでいくものではないでしょうか。

高橋

なぜ運動をするのか

入学おめでとうございます 運動教室で大事なこと

2019年 04月 07日

4月になり、今年度の教室もスタートしました。

遅くなりましたが卒園、卒業だった皆様、おめでとうございます。

今週はいよいよ入学式。小学校・中学校生活のスタートですね。また、引っ越しをした人は学校も住む場所も新しくなります。

それぞれ新しい環境に少しずつ慣れて元気にがんばっていってくださいね。

新年度の教室はさっそく2日から始まっています。はじめのうちは新1年生は大変かもしれませんが、周りの子らがうまくフォローしてなじんでいくと思います。

メンバーも少し変わります。新学年になりましたので、気持ちも新たにがんばっていきましょう。

さて、気持ちも新たに私の運動教室の目的や考えについて書いてみます。

大事なこと

その①【身体をきたえる】

運動する前に、病気にならないで健康に生活できることが大切です。勉強をするのにも大人になって仕事をするのにも、健康や体力は必要です。元気な時はあまり感じませんが、ひどい風邪を引いたり、大けがをして体を動かせなくなったりすると健康のありがたさがよくわかります。

「身体をきたえる」ということは、日常生活の立つ・座る・歩く、机で勉強する時の動きや姿勢にも関係があります。身体をしっかり動かせることは、字を書くことや集中して話を聞くことにつながるのです。

その②【頭をきたえる】

「頭をきたえる」というと「勉強」が思い浮かぶでしょうか。漢字の練習をする時、算数の問題を解く時など。

運動の時はどうでしょうか?体はつかうけど頭はつかわないでしょうか。

オニごっこを例に考えてみましょう。

まずオニがどこにいるか注意しますね。どのくらいの距離か、どこを見ているか、こちらに来るだろうか。

オニがこちらに来た場合、どこに逃げたらいいだろうか、周りはどんな状況か、むこうに行ったら行き止まりだから捕まるかもしれない、あっちの方が逃げやすそうだなど。

氷オニだったら、捕まった仲間を助けなければ…どこにいるか、オニの動きは、他の仲間はどんな動きをしているかなどなど。

意識しないかもしれませんが、これらのことを考えながらオニごっこをしています。それも状況は常に変化します。その瞬間に周囲の状況、オニの注意、相手までの距離、スピード、タイミング、すべてを自然と頭の中で計算して動いているのです。すごいですね。

人間の脳が発達したことと手の機能の発達には深い関係があると言われています。身体をつかうことは頭をつかうことなのです。

その③【心をきたえる】

運動(遊びも含みます)をする時、体も頭もつかいます。それと一緒に心(気持ち)も動きます。

体を動かすと楽しい

たくさん走ってきつい、ハアハアくるしい

オニごっこで捕まってくやしい

試合がおもしろかった

色々な気持ち、感情が出てきます。

うまくいったりいかなかったり、試合の時などあーだこーだと言い合いになることもあります。

運動(遊び)をする中で、友達とのコミュニケーションが自然と生まれます。

相手の話を聞く、気持ちを考える、アイデアを出し合う

意見がぶつかることやケンカになることもありますが、そうした友達との関わりを通して、体だけではなく心もきたえられ成長していきます。少し難しい言葉にすると社会性が身につきます。

さてさて「運動教室」というのは「運動を上手に」するためにというのが一般的かもしれません。

しかし私は「運動が上手」や「足が速い」などというのは人生において大して重要ではないと考えています。スポーツのジュニア育成においてもそれが目的ではいけないと思います。

(運動・体育・スポーツ、それぞれ言葉の定義はちがうのですか、ここでは同じようなものと考えて問題ないと思います)

大人になったら縄跳びなんてしません、使いません。(中学生になったらもうしないかな)

跳び箱もしません。できなくても何ら困りません。

運動ができるのが大事、できるからすごい、できないからダメ

ではなくて

運動を通して体や頭や心をきたえるのが大事なのです。

これは他のことにも当てはまると思います。

例えば中学校で部活をする場合

もちろん好きだったり興味があったりでするのでしょうから、練習して上手になる、試合やコンクールに出る、成績をあげるのは良いことです。

ただ、上手下手、勝つ負けるなどの結果だけにとらわれるのではなく

その部活を通して体、頭、心をきたえる。

それに取り組む過程で何を学ぶかを大切にしてほしいと思います。

部活に入ったり何か新しいことに挑戦する人はがんばってくださいね。

高橋

https://tomproject.exblog.jp/239211294

鉄棒・逆上がりに対する考え方

以前に書いた鉄棒の記事、8年前…

「逆上がり偏重」https://tomproject.exblog.jp/23047769/

逆上がりや跳び箱は体育の代名詞のようにされる印象ですが、それらができるかできないかに囚われているのはもったいないと考えています。

逆上がりができる要素として、大雑把にいうと

・鉄棒をつかんで体を引き寄せる力

・脚の振り上げ

・体(股関節周辺)を鉄棒に近づけ回転する

などがあります。

逆上がりや鉄棒自体の練習することも、これらに関する能力を養うことになるのですが、「できない」状態の動きを繰り返しても「できる」動きや感覚の習得にはつながりにくいです。

鉄棒をつかんだり体を支持したり、揺れる、脚を振る、回るなど、できる動きからしていきましょう。また逆上がりではない他の色々な技をしてみましょう。

そして上記の要素や能力の獲得に必要なのは、基本的な身体の能力や使い方、平衡感覚です。

鉄棒がすごく怖い、手を放して落ちて怪我をしてしまうなどは、鉄棒をする以前の基礎的身体能力が育っていない状態です。無理に鉄棒をしても、怖いきつい痛い…と嫌になってしまう可能性があります。

鉄棒に必要な基礎的な体力や運動技能を育てるトレーニングができるとよいです。また鉄棒をするときには無理せず怖くないところでしていきましょう。

首の反射が統合・抑制できていないと、顎が上がる・腕が伸びる・手が開いて鉄棒から落ちるということにつながり、逆上がりができないのはもちろん怪我もしやすくなります。

逆上がりをするには、脚を振り上げて骨盤と脚を鉄棒に近づけるときに、顎を引いて・肘を曲げる(引き寄せる)ことができると技の成功に近づきます。

逆上がりができないのは「ダメ」ではなく運動発達の目安として、できないのであれば原因や運動の課題を考えてほしいと思います。そして体を揺らしたり回転させたり、平衡感覚を刺激する大切な運動ですので、怪我なく安全に、できれば鉄棒の楽しさも味わえるよう取り組んでもらいたいですね。

ちなみに私は鉄棒は苦手で、逆上がりは4年生か5年生のときになんとかできるようになったと記憶しています。鉄棒は嫌いだったので体育の授業のときくらいしか触りませんでしたね…

高橋

https://tomproject.exblog.jp/243221779

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